離婚
離婚~自分自身の精神的・経済的自立のために
札幌そして北海道は、離婚率の高い地域です。そこで、弁護士としても離婚のご相談を受けることが多くなります。これまでお聞きした離婚したいという理由は、浮気、夫若しくは妻が一方的に別居を始めてしまった、家庭をかえりみない、妻あるいは夫として正当に扱われていないというのがほとんどです。背景には、子どもの出生や成長、夫の労働環境の変化に伴い、夫婦の生活環境が変わってしまった、あるいは、夫婦の一方がそれまでの役回りに我慢できなくなったということが多いように見受けられます。
ただ、離婚を決意するには、相手方との生活が嫌になったという以上に、自分自身であらたな生活を始めるという決意が必要です。子どものこと、将来の生活設計等を十分に検討することなしに離婚はできません。
離婚の最終目的は、自分自身の精神的・経済的自立であり、当事務所は、このような観点から、離婚相談を行い、協議離婚についての助言、離婚調停・離婚裁判に臨むこととしております。
離婚までの道のり
「法は、家庭に入らず」という法格言があります。離婚の問題についても、夫婦の話し合いによって解決されるべきというのが、法律のスタンスです。いきなり、離婚裁判(離婚訴訟)に持ち込むことはできません。
弁護士に離婚を依頼しようとお考えの方は、既に相手方との話し合いが決裂し、不安・焦燥にかられていることと思います。しかし、弁護士が関与する場合,法律的な観点・基準に沿って、そして、判決による離婚を視野に入れて、貴方が精神的・経済的な自立を獲得できるよう、相手方と交渉することになりますので、ご安心下さい。
なお、話し合いという観点から、離婚の手続を見ると、以下の図のようになります。
何を話し合うか
1.離婚自体
相手方が離婚することについて了解しているかどうか、これが最大の問題です。
不貞行為(浮気・不倫)や暴力など、相手方に一方的に非があり、そのため夫婦関係が破綻したという場合、相手方が離婚に応じなくとも、最終的には、離婚裁判に持ち込んで、判決を得て離婚することが可能です。
しかし、相手方が一方的に悪いとまでは言えない場合、裁判に持ち込んで、勝訴できるという保障はありません。勝訴できるというためには、法定の離婚原因がなければならないからです。
民法第770条第1項が規定する離婚原因は、次のとおりです。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
相手方が一方的に悪いとまでは言えない場合、五号の場合に該当するかどうかが争点となります。
離婚裁判を視野に入れた場合、離婚を求める方は、話し合いの段階で、相手方の落ち度などを積み重ねて、「婚姻を継続し難い重大な事由がある」と主張することになります。
しかし、相手方の落ち度を指摘すれば、逆にこちらの落ち度も指摘されることになります。このことで、双方、感情的になってしまい、争いも長期化することもあります。
相手方との決別を決意したのであれば、相手方に対する感情を引きずることはよくありません。
現実主義者になって将来を切り開くことを望みます。
なお、離婚調停での話し合いにおいて、離婚することについて合意に至らなくとも、別居状態を続けること、そして、夫が妻に対し、離婚するまでの間、婚姻費用を支払うという内容の合意を取り付けることは可能です。
2.親権の帰属
離婚するにあたって、夫婦に未成年の子どもがいる場合には、必ず、親権者を決定しなければなりません。
ほとんどの場合、母に親権が認められることになりますが、子が15歳以上の場合、子の意思も尊重されます。
親権の帰属の問題のほか、調停,裁判上の和解においては、子と暮らしていない方の親が、子と面会を行うこと(面接交渉)やその方法などについて、話し合われることがあります。
3.婚姻費用・養育費
夫婦が別居を開始し、離婚が成立するまでの間、夫は、妻、そして、妻が引き取った子に対して、その生活費を支払わなければなりません。この生活費を婚姻費用といいます。
また、夫婦が離婚した場合、夫は、妻が引き取った子に対して、その生活費を支払わなければなりません。この生活費を養育費といいます。
4.財産分与
財産分与とは、結婚生活中に夫婦で築き上げた財産を清算することをいいます。
夫婦で築き上げた財産が対象となりますので、結婚前に取得した財産、親から相続した財産は対象となりません。
また、プラスの財産(現金、預貯金、保険、不動産等)のみならずマイナスの財産(借金等)も分与の対象となります。
実務では、夫婦それぞれ2分の1の割合で清算されることが多いです。
5.慰謝料
相手方の浮気・不倫、暴力等の不法行為によって、離婚せざるを得なくなったということを理由として、そのような行為により受けた精神的苦痛を償うための損害賠償のことをいいます。
このように慰謝料は、相手方に不法行為があったことを前提とするものですので、離婚することになったからといって、当然に発生するものではありません。
相手方が財産隠しを画策している場合~仮差押え
離婚の話し合いがつかない前に、相手方が、自分の名義となっている預金を全て引き下ろしたり、不動産の名義を第三者に移転しようとすることがあります。
そうなると、離婚裁判において慰謝料請求や財産分与請求が認められたとしても、判決で認められた額を回収できない可能性があります。
このような事態を回避する法的な手段として、仮差押えがあります。仮差押えとは、金銭債権の請求権者が、将来の金銭債権の実現を確保するために、支払義務者の財産の処分に一定の制限を加えて、現状を維持する制度のことをいいます。
離婚の場合、慰謝料請求権、あるいは、慰謝料請求権に加えて財産分与請求権について、仮差押えすることが認められています。
仮差押えは、支払義務者である相手方の言い分を聞かないまま、申立人側の主張・立証だけで、相手方の財産処分に制限を加えるものですから、申立人側の主張・立証は、相当程度具体的で明確であることが必要です。
また、裁判において、離婚そのものが認められない場合には、訴えられた相手方は、損害を被ることになるので、その場合に備えて、仮差押えを申立てる場合には,請求額の10~20%の額の金銭(担保金といいます)を、供託所に供託しなければなりません。
費用
費用についてはこちら⇒弁護士費用ページ「離婚事件の着手金および報酬金」をご覧ください。